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紹介記事2022.12.12
スギヒラタケ脳症の発症メカニズムに関する研究成果が科学新聞に紹介されました。
(科学新聞2022.12.02号6面掲載記事 (科学新聞社掲載許諾済))
スギヒラタケによる脳症
3物質が関与して発症 静岡大、宇都宮大など解明
スギヒラタケは、キシメジ科スギヒラタケ属のキノコで、北陸、中部、東北地方を中心に食用とされてきた。しかし2004年9月以降、新潟・山形・秋田の各県でこのキノコの摂取による急性脳症が疑われる事例が発生した。
当時は戦後最悪の食中毒事例とされ、大きく報道された。厚生労働省は研究班を立ち上げ原因究明に努めたが、最終的には「原因不明」と結論付け06年に研究班を解散した。
静岡大学の河岸洋和特別栄誉教授(当時研究班にも在籍)、宇都宮大学の鈴木智大准教授、東海大学の浅川倫宏准教授、国立環境研究所の前川文彦主幹研究員らの研究グループは、研究班の解散後もこのキノコによる急性脳症発症機構の解明に継続的に取り組み、スギヒラタケから、マウスに対して致死活性を示す新規のタンパク質(プレウロサイベリンと命名)の精製に成功した。プレウロサイベリンと、スギヒラタケ由来のレクチン(PPL)が複合体を形成し、タンパク質分解活性を示すことを明らかにした。さらにプレウロサイベリンとPPLと、過去に神経細胞に毒性を示す化合物として、スギヒラタケに存在することを予想し化学合成によってその存在を証明したプレウロサイベルアジリジン(PA)の3つの混合によって、マウスの脳内に障害が起きることを明らかにした。
これらの結果から、スギヒラタケ中の3つの物質が急性脳症の発症に関与するという新たな毒性メカニズムを提唱した。Toxiconオンライン版で公開された。