研究内容

木材腐朽機構の解明

「白色腐朽菌」は、木を腐らせ生育する木材腐朽菌に含まれ、シイタケ・エリンギ・エノキタケなどのキノコ類もこの微生物群に属します。リグニンを分解し、白色の多糖を残すことから「白色腐朽菌」と呼ばれます。白色腐朽菌は、リグニンを水と二酸化炭素までに完全に分解することが出来る唯一の微生物として知られています。それ故、白色腐朽菌はリグニンのような難分解性物質の分解力に優れています。同時に、リグニン分解の過程で生じた多様な構造を持つ低分子有機物を、更に分解するための代謝・分解力も保持していると考えられています。この様なリグニン分解能は非常にユニークな機能であるにもかかわらず、その分解メカニズムの全貌は未だに解明されていません。リグニン分解には主にリグニン分解酵素と言われる酸化還元酵素と、その機能をサポートする周辺酵素によって進行する事は解っていますが、酵素反応のみではリグニン分解を進行させることは非常に難しく、まだ未知の機構が存在していると我々は考えています。リグニン分解機構の全貌解明ができれば、産生されるリグニン分解産物を自由にコントロールできるようになるかもしれません。

 我々の研究グループでは、白色腐朽菌のリグニン分解機構を解析するために、非常に強いリグニン分解能を持ち、多糖を余り分解しないリグニン分解選択性の高い白色腐朽菌、つまり高活性リグニン分解菌であるPhanerochaete sordida YK-624株を主な研究対象として、「白色腐朽菌のリグニン分解機構の全貌解明」に向けた研究を進めています。木材中のリグニン分解に関わる酵素・遺伝子の探索や機能解析はもとより、リグニン分解により生じた低分子リグニンフラグメントの代謝に関する研究なども進行中であり、分子生物学、生化学分野から有機化学まで幅広い分野の実験を行っています。